2024-11-30

最先端技術を駆使する、宇宙食と宇宙服。
 

 人類が宇宙へ進出しても、衣・食・住の大切さは変わらない。宇宙開発ではこれまでNASA(アメリカ航空宇宙局)、FSA(ロシア連邦宇宙庁)が中心となり、宇宙食や宇宙服の開発を行ってきた。厳しい宇宙環境下での使用を考慮し、開発には最先端の技術が用いられていることは言うまでもない。宇宙開発が始まって60年以上が過ぎ、各国が共同で宇宙ステーションを運用する時代。今なお続く宇宙食・宇宙服の開発に光を当てる。

特殊な条件下での食事を可能にする「宇宙食」

 宇宙での食事では、無重力という特殊な条件下で、栄養分や水分を摂取する必要がある。その他にもさまざまな厳しい制限が課せられ、宇宙船内には食品用の冷凍設備が存在せず、保存性や衛生面についても厳しい基準が必要不可欠となる。また、密閉された空間のため、食品ゴミや臭いの発生を抑えることも求められ、加熱方法など調理方法も限定される。
 NASAの場合、1960年代にはペースト状にした牛肉やチョコレートなど、チューブ状の容器からの食事に限られていたという。その後、技術の発展とともに一口サイズの食品・中間水分食品・乾燥食品や菓子、ドライフルーツが提供されるようになり、食事の幅が広がっていく。次いで、缶詰やレトルト食品が登場し、スペースシャトル計画では市販の食品も搭載可能となった。現在、ISS(国際宇宙ステーション)ではパッキングされた生鮮食品の供給も行われている。
これら宇宙食の進化は前述した通り、最先端の保存技術が用いられてきたからこそ実現できたものだ。生鮮食品を宇宙空間へ届けることができるのも、パッキング技術が進歩したためであると言えるだろう。

過酷な環境で高耐久性を実現する「宇宙服」

 無論、宇宙環境は過酷である。宇宙ステーションが活動を行う高度では、気圧はほぼゼロ。日なたの温度は摂氏121度、日かげの温度は摂氏マイナス121度にまで達するという。ほかにも船外活動では、宇宙の塵や放射線、紫外線などから体を保護することも必要になる。宇宙服とはいわば、小型の宇宙船ともいうべきものなのだ。
 1960年代、NASAの宇宙計画初期に、航空機パイロットの与圧服を改良し、宇宙服として使用した経緯がある。その後、船外活動が必要なジェミニ計画では、宇宙服を宇宙船と繋ぎ呼吸を確保。アポロ計画では、空気・水・電池などの供給が可能な生命維持ユニットも開発された。宇宙服本体は気密性・断熱性などを保つために、ナイロン、アルミ、ゴアテックスなど、合計14層もの布地からできているという。
 また、特殊な縫製技術も必要だ。グローブやヘルメット、身体冷却用の下着など、各種アイテムが宇宙での生命維持をサポートしている。
現在進行中の宇宙計画では、打ち上げと帰還時に着用する宇宙服と、船外活動時などに使用する与圧服の二つを用意。2020年に民間が打ち上げた宇宙船クルードラゴンでは、新たな与圧服も導入している。3Dプリンターで作成したヘルメットやタッチスクリーンに対応したグローブなど、最新技術が随所に使用された。
 常に時代の最先端技術を取り入れてきた宇宙の「食」と「衣」。NASAではアルテミス計画などの新たな宇宙ミッションに備え、宇宙服のさらなる開発を進めているところだ。今後導入される最新技術には、どんな驚きが隠されているのか、その進化から目が離せない。

Business Issue Curation