2024-01-9
勢いを見せるアウディのEV化
脱炭素社会へと世界の趨勢が動く中、ドイツの老舗自動車メーカー・アウディは、2026年以降に発売する新型車をEVのみにすると発表した。多くの開発費を投入し、オール電動モデルAudi e-tronの投入や充電設備の設置など、世界各地でアウディの電動化への移行は急ピッチで進む。ここ数年、アウディの電気自動車は販売台数を順調に伸ばしており、市場の関心度も高い。EVの未来にはどんなイノベーションが求められているのだろうか。
2026年以降の電動化を後押し
2022年度、アウディグループの売上高は617億ユーロを超え、前年比16%以上の増加で順調な滑り出しを見せている。中でも電気自動車の売上は4割以上増加し、年間販売台数は12万台に迫る勢いだ。持続可能な企業を目指すアウディにとって、電気自動車の好調な推移は、今後の戦略を占うマイルストーンとなるだろう。2025年までにバッテリー式電気自動車(BEV)を20モデル以上市場に投入すると言われてお2033年までには原則として内燃機関を搭載した車の製造を終了。段階的に全車種のEV化を進めていくとしている。
充電インフラの整備も進む
2022年から2026年の5年間で、アウディは車両の電動化とハイブリッド化の設備投資・研究開発費として約180億ユーロを支出するという。これは年間予算3700億ユーロの約半分を占める金額だ。2023年のEV年間販売台数は300万台を目標にすると設定し、販売・サービスの拡充を進めている。
そんな中、充電インフラの整備も同時に進む。2021年にはドイツ南部の都市ニュルンベルクに「アウディ チャージングハブ」を開設するなど、欧州26カ国に約29万の充電器を整備したほか、フォルクスワーゲン、ポルシェとともに設立した合弁事業IONITY(アイオニティ)を通じ、2025年までに欧州全体で350キロワット(kw)の高速充電器を約7,000基設置する予定だという。
日本国内でも好調な売り上げ
日本に目を転ずると、2022年度のアウディの国内新規登録台数は約2万3,000台。前年と比べ10%の増加となっている。2023年度も前年度以上の数字を堅持しており、日本国内の売上が順調に推移する中、日本独自のインフラ整備も急いでいるところだ。
2023年冒頭の公式記者会見でアウディジャパンは、高速充電設備の整備について株式会社パワーエックスとの事業提携を発表。パワーエックスは、E V超急速充電器をはじめとした定置用、船舶用の蓄電池の製造・販売を行う企業である。2021年設立の企業ながらメガバンクや国内大手電力会社、商社、不動産会社などから出資を受け、既に100億円近い額の資金調達を実現。両企業はアウディ・ディーラーにおける蓄電池搭載型超急速E V充電器「ハイパーチャージャー」の導入と、充電の拠点となる「チャージングハブ」の共同運営について協業の検討を開始し、覚書を締結した。今後は Audiディーラーや国内各地へのE V急速充電器の設置を進め、2023年までに充電ステーションを全国各地7,000拠点に展開することを目指している。
EVは収益の柱へ
2023年度、前述の通りアウディは堅調に販売台数を伸ばし好調なスタートを切った。上半期の売り上げはドイツ国内はもとより、欧州各国、米国、中国など世界各地で前年を上回る結果となっている。その中で、電気自動車の販売台数は50%以上増加。市場のニーズを反映したとも言えるこの結果は、アウディが進める体系的な電動化戦略が正しいことを客観的に証明しているだろう。この実績に対し、「今後のモデル攻勢にとって非常に重要な基盤になる」と発言した最高財務責任者(CFO)ユルゲン リッテルスベルガー氏。今後アウディは2026年の完全電動化を背景に販売攻勢を強めるとともに、電気自動車の収益性の更なる向上も目指す姿勢を明確にしている。勢いを増すアウディの電動化の未来からますます目が離せない。